ChromaJeanが目指すことすべては、時間を捻出するために
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著:代表取締役社長兼CEO 三輪勝彦
公開日:2026年2月
1. ChromaJeanの事業理念
考えられる経営資源の中で事業規模を問わずに、唯一平等に与えられたものは「時間」です。
我々が真の意味で届けるサービスは、研究者が創造に没頭するための「時間の捻出」です。
その手段として、「日本発祥・世界初となるクロマトグラフィー技術」をあらゆる研究機関で使っていただきたく、武田薬品から独立して2017年より事業を開始しました。
数ある研究分野の中でも、特に創薬研究のお客様にご活用いただいております。
そのため、ここでは創薬研究活動の変革をお手伝いする内容でご説明させていただきます。
2. 何故、創薬研究の変革が必要なのか?
生き残りを賭けた競争力の獲得が求められる
いかなる事業形態においても生き残るための競争戦略が求められます。
特に、医薬品業界においては、今日ほど競争優位性の獲得が重要視される時代はなかったのではないでしょうか。
その理由は、グローバル市場における新薬開発のハードル、すなわち「生産性」の顕著な低下が叫ばれて久しいことにあります。現在においても、この傾向に歯止めがかかるような目覚しい変革が待ち望まれていますが、残念ながら未だ登場していないように思われます。
医薬品業界における「生産性」の顕著な低下という問題は、衆目の一致するところです。
有効な打ち手を講じる第一歩として、問題点の解釈に齟齬を無くす必要があります。
そこで、昨今バズワード化してしまったこの「生産性」という言葉を定義しておきましょう。
「生産性」は、分数で表すことが可能です。
分母として投下資源、すなわちヒト・モノ・カネ・時間などを挙げることができます。
分子として、事業活動および個別の取り組みに求める「成果物」が該当します。
以上より、医薬品業界における「生産性」の顕著な低下という問題は、投下資源が増加傾向にあるにも関わらず、成果物として新薬を創出できる数が減少傾向にある、ということです。
新薬の開発成功率は非常に低く、探索研究段階から含めると「1/25,000程度」とも言われ、この数字は「生産性が低い」と言わざるを得ません。
「生産性」を左右する要素を確認できたところで、それを向上させるための打ち手を確認していきましょう。2通りの打ち手を単独で、あるいは複合的に講じることができます。
最初に、分母である投下資源の削減が考えられます。成果を得るためのヒト・モノ・カネ・時間を減らせば、仮に成果が同じであっても「生産性」は向上します。
次に、分子である成果物の増強が考えられます。事業活動および個別の取り組みに求める成果物の質や量を増強することで「生産性」が向上します。
上記のアプローチを同時に達成することで「生産性」が極大化することは自明ですが、如何なる事業規模においても投下資源は有限ですので、手を着ける順番の工夫が必要です。
現実的には投下資源、すなわちヒト・モノ・カネ・時間を何らかの方策によって削減し、新たに捻出できた資源を用いて、新たな成果の獲得に乗り出すのが得策と言えるでしょう。
仮に、「生産性がどこも似たようなもの」と仮定すれば、一般的には創薬研究活動において投下資源が潤沢であること、すなわち規模の大きい企業の方が圧倒的に有利です。
新薬の数(上市数)や質(優位性の高さによる売上高)において、生産にかかわる量や数に劣る日本の製薬企業が海外のメガファーマに大きく水を開けられているのはこのためです。
現実的には、いきなり「投下資源を増やす」ことは難しいため、誰もが「固定資産」を変動させずに成果を上げる工夫に取り組みます。
そしてもともと事業の規模に劣る日本国は、ある解に辿り着きます。個人の頑張り、すなわち「一人当たりの労働時間を増やす」ことに着眼しました。
その結果、成果に辿り着くために企業と個人は一蓮托生となり、不眠不休で働く時代がありました。しかしながら、長時間労働で勝負するのが難しい時代になってきました。
下図に、日本国の労働時間や産業別就業者の推移の調査結果を示します。
左の図は、常用労働者1人平均年間総労働時間数です。以下のような解析が可能です。
- 労働時間は、1980年代と比較して、約20%減少している
- 原因としては、働き方やキャリア形成の変化が挙げられる
- そのため、単純に労働時間を増加させることは難しい
右の図は、産業別就業者数の推移です。以下のような解析が可能です。
我々は、創薬研究活動を第三次産業と見なしています。
- 産業構造は、1980年と比較して、第一次産業・第二次産業が減少し、第三次産業の割合が約35%増加している
- 第三次産業では、それまでと比較して、労働時間や設備の拡大が単純に成果に比例しづらく、情報・知識・サービスへの依存が大きい
- そのため、減少している労働時間が単純に増加したとしても、以前のような成果を得ることは難しい
上記の調査結果から、次のような示唆を抽出できるのではないでしょうか。
第一に、長時間労働を推し進めたところで、持続的な競争優位性を得られていないことがわかってきました。「僅か1/25,000」の成功確率を上げる根本的なアプローチが必要です。
第二に、就業者のQuality of Life(QOL)を重要視する潮流が到来しました。
一昔前の日本には、長時間労働を「美徳」とするような文化がありましたが、現在では完全に「悪」とみなされています。
企業は、研究者に対して長時間労働で忠誠心を示すのではなく、限られた時間で成果を上げることを求めるようになりました。
つまり、個人の頑張りで乗り越えるには限界があり、同時に個人の価値観・社会の倫理観が大きく変わったのです。
以上より、「研究は、効率が勝負」と断言できる時代に突入したと言えます。
グローバル市場において新薬創出率の低下が危惧される今日、投下資源が潤沢な海外のメガファーマが躍起になって「生産性」の向上を目指す以上、規模に劣る日本の製薬企業がその上を行く「生産性」を持たなければ、生存が難しくなるのは必然です。
前述した通り、投下資源は有限です。その中で唯一、事業の規模に関係なく平等に与えられているのは「時間」です。即効性の高い「効率化」の打ち手となり得ます。
ただし、これまでの日本国の事業全般のように「他者と比べて一人あたり長く働くことで投下資源を増やす」という、終わりのないマラソンが通用する時代ではありません。
その逆のベクトルである「時間」という投下資源の削減、すなわち「これまでの体制を見直すことで本当に必要なことに時間を使い、それ以外をなくす」という方策が得策です。
「本当に必要なことに時間を使う」とは、僅か1/25,000の成功確率を上げる根本的なアプローチに研究者が専念することです。
「それ以外をなくす」とは、上記の創造的な業務以外の労働を洗い出し、その取り組み自体をなくすか、何かに転用することです。
「競争力を確保するためには、創造的な業務に没頭する時間の捻出が必要」と言われて、即座に具体的な打ち手を思いつかれた方は、これ以上読み進める必要はないと思います。
たいていの方は、「言いたいことは分かったが、そんなことが出来るならとっくに着手しているし、むしろ散々手を尽くしてきた」と思われたのではないでしょうか。
もしくは、「スローガン的な話が聞きたいのではないし、まさか今さら会議の時間や回数を減らせとか、効率的な外注と相見積もりの指南をするつもりか」という警戒の声が聞こえてきそうです。
我々が提案するのは、「クロマトグラフィー技術の変革による劇的な時間の捻出」です。
そして時間を生み出すだけでなく、その過程で必ず生じる「創薬研究における競争力」を具体的に、QCDの観点で数値化して示すことが可能です。
昨今のビジネスシーンにおいて、競争力の具体的な指標として、Quality, Cost, Delivery(QCD)が用いられる機会が増えてきました。クオリティーやコストについては聞き慣れていると思いますが、デリバリーは「納期」と見立てることができます。創薬研究活動においては、成果が得られるまでのトータルリードタイムと捉えてください。
上記の3要素は、互いに影響し合う「トレードオフ」の関係にあります。そのためそれぞれのライトバランスを保つよう設計すべきと言われています。
我々が標榜する「クロマトグラフィー技術の変革」では、従来の創薬研究のありかたと比べてQCD全ての要素において圧倒的な優位性を獲得することが可能です。
既に我々は、創薬研究およびそのCROにおいて多くの実績を挙げており、複数のメディアでも紹介されております。
その一方で、ページ数の限られた誌面では我々の理念や着想、考え抜かれた打ち手を十分にお示しすることができなかったため、この機会を得てご紹介させていただきたく存じます。
3. 何故、クロマトグラフィーの変革が有効なのか?
クロマト工程は、創薬研究の変革において未開の領域
創薬研究は、探索段階と開発段階とで研究ステージを大別することが可能です。
研究ステージを区別することには理由があります。それぞれの研究は、目的と目標が異なるため、それぞれ求める成果物が変わるからです。
これ以降は、我々のお客様のボリュームゾーンである、創薬探索研究におけるクロマトグラフィー技術およびその工程全体を変革する意義について述べていきます。
創薬探索研究の「競争力」は、構造活性相関研究(SAR study)サイクルの「早さ」であると言い換えることも可能です。
創薬探索研究は、4つの要素(工程)に分解することができます。
第1段階として、薬効が期待できる物質をデザインすることからはじまります。(設計)
第2段階として、思い描いた構造の物質を得るために化学合成します。(合成)
第3段階として、物質を純化するクロマト工程が必要になります。(分析・分取)
第4段階として、上記の手順で合成・純化した物質の薬効を調べます。(評価)
上記のサイクルは、以下のようなQCDの姿が理想です。
「取得したデータの質」、「取得した化合物の質」を担保しながら循環させることで、「化合物デザインの質」が高まり、最終的に候補化合物を見出すための「意思決定の質」を高めることが求められます。
そのためには、定められた期間内かつ少ない工数で意思決定するための循環の早さが必要になります。
SAR studyの第3段階として示した、物質を純化する技術がクロマトグラフィーです。
化学反応の過程で生じる不必要な成分を取り除いて、目的とする化学物質のみを取り出す手法は、古くからいくつも存在しています。
その中で混合物の分析・分取を意味するクロマトグラフィーという技術は、近年めざましく発展し、急速にニーズを獲得した技術と言えます。
クロマトグラフィー技術の「使いかた」について、説明します。
緑色を構成する色素を、分離することに例えます。
【緑色】を、【特別な力が働く管】に入れて、【液体】を流した、とします。
【特別な力が働く管】の中で、【管】との相性が良くて中でとどまろうとする【黄色】と、【液体】の方と相性が良くて一緒に外に出て行こうとする【青色】の、性質の差が生まれます。
こうした【管】に対する、【物質】の相性の差を用いて分離する技術が、クロマトグラフィーです。
クロマトグラフィー技術の「使いみち」をお伝えします。
緑色を構成する色素が、どの程度存在するのか。それを確かめるのが“分析”です。
さらに各々の色素を取り出すのが“分取”です。
たったこれだけのことなのですが、実際に直面する反応混合物は、随分複雑です。
化学反応の過程で生じる不純物が混入したままでは、使いみちがありません。
下図のクロマトグラフィー分析結果に示した通り、「化合物の質」が低いことがわかります。
「恐竜の背中」のような状態であり、これでは薬理活性に何が寄与したのか不明です。
一方で、クロマトグラフィー分取により、「恐竜の背中」から「東京スカイツリー」の品質に仕立て直したのが下図です。この状態ならば薬理活性に何が寄与したのか明確であり、「データの質」・「化合物の質」・「デザインの質」に曇りのない判断ができるため、候補化合物を創出するための「意思決定の質」を高めることが可能になります。
このように「純度=質」へのこだわりを、最もタイムリーに、最も網羅的に、最も精度良く満たすのがクロマトグラフィー技術です。
「目的成分の品質を見極め、同時に不要な成分をも見つけて各々を確実に取り出す」ことを兼ね備えた技術としては、クロマトグラフィーに競合するものがないと言えます。
我々は、SAR studyに欠かせない4つの要素について解析したところ、【分析・分取】すなわちクロマト工程が手つかずの状態にあると判断しました。
たとえば、設計では、計算化学やin silico研究、ビッグデータやAIといった取り組みで効率化されてきました。
合成では、ハイスループット合成や自動合成装置で効率が向上しており、外部リソースの活用もどんどん進んでいます。
評価では、ハイスループットスクリーニングの影響は非常に大きいところです。
しかし残念ながらクロマト工程に対しては、これまでに抜本的な打ち手はなかったと弊社は考えています。
もちろんHPLCやカラムなど、様々なプロダクトの性能は向上してきています。
ただ、クロマト工程全体を一変させるような、劇的な変化があったのかと言われると、そうではないと言わざるを得ないのが実情です。
我々は、クロマト工程の変革の遅れを明らかにするために、なんらかのファクト、数値によって他の工程との比較を試みました。
下図に示した円グラフは、製薬企業の合成研究者にインタビューした調査結果です。
創薬探索研究の殆どの有機合成部門では、合成研究者自身が設計、合成、分析・分取を実施しています。これら業務のうち、クロマト工程において合成研究者のリソースのおよそ半分の50%を占め、大きな負担となっていることがわかりました。
やはり、クロマト工程を変革する抜本的な打ち手がこれまでになかった、そのためこのような状況になっていると考えられます。
なお、このアンケート結果は、一般的な低分子化合物のものです。ペプチドやオリゴ核酸の中分子化合物では、逆相HPLCでの分析・分取が必須となるためさらに負担が大きく、75%を占めるというコメントが多くありました。
何故、ここまでクロマト工程が手つかずのままであったのか。理由は明確です。
未だ不確実で属人的な、利用者の「経験と勘」に頼らざるを得ないからです。
下図に示したワークフローは、創薬研究の現場におけるリアルなクロマト工程です。
赤色は、ヒトが予め環境を設計しておくべきステップです。
青色は、サンプル毎に、ヒトが対応を考えるステップです。
灰色は、装置が稼働しているステップです。
各段階で、けっこうやり直しが発生します。
研究者の悩みは、次のようなものです。
- ワークフローが複雑で、目的達成までの道のりが遠い
- やってみなければわからないことが多く、やり直しを避けられない
- 解析・判断するポイントが多く、個人差が大きい
つまり毎日、こんなにも重たい荷物を背負った状態で、研究活動が営まれているのです。
我々は、クロマト工程全体の変革によって合成研究者の負担を削減し、そのリソースを本来の創造的な業務へ再配分することをお約束する事業を展開しています。
他の打ち手としては、優秀な人材をたくさん採用したり、装置や設備をどんどん拡充したりといったことも考えられますが、人材市場の面でも、資金の面でも簡単ではありません。
現実的かつ即効性の高い打ち手として、現在抱えている優秀な人材を、これまで手つかずだったクロマト工程の労苦から解放して、「本業」に注力できるようにすることを提案します。
私は前職、武田薬品の有機合成部門においてクロマトグラフィーを専門とするグループを統括していました。部門全体の研究効率化のために、クロマトグラフィー技術の専門集団を配置して分業する方策を自ら提案しました。合成研究者が日常的に抱える重たい荷物を軽くしてあげたかったのです。
業界でもトップクラスの研究者を数百名抱える研究所において、分析・分取業務を一手に引き受けるリーダーとして抜擢され、その期待に応えようとしたものでした。
文字通り早朝から夜遅くまで休みなく働き続けた結果、数年目に救急車で運ばれることとなりました。自ら志願したとはいえ、期待されるパフォーマンスを低下させずに業務を継続するには、もう限界が来ていたのです。自分が担架に乗せられたとき、終わりのないマラソンに挑んでいたことにはじめて気が付きました。
自宅療養の間、これまでと考え方を変えることにしました。チームを「企業内ベンチャー企業」に見立て、自分を「経営者」としてゼロベースで事業戦略を策定しました。
最初にグループのあるべき姿を描き、「理想と現状のギャップ」となる問題を特定しました。
業務が個人の力量に強く依存していたために、降りかかる大量の案件をチーム全体で裁けないことが問題でした。大量に捌くことは大企業の宿命であり、それに応える業務の「仕組み」が欠けているという結論に至りました。
次に、自分が得た「強み」の棚卸しを行い、それによって「理想と現状のギャップ」を現実的に埋められる打ち手を考えました。
自分の「強み」とは、クロマトグラフィーという特殊技術の使い方を言語化し、業務の意思決定に必要なロジックを数式化する能力ではないかと解析しました。
そこでワークフローの言語化と数式の開発により、これまで長年の経験と勘が必要な特殊技術とされてきたクロマトグラフィーが、誰でも簡単に高速で、高い成功確率で行えるようになりました。
その結果、懸案だった自身のチームの労力負担は、当初に比べて僅か10%程度にまで削減(約90%の削減に成功)しました。メンバーが休みを取りやすい状況になったにも関わらず、チーム全体の処理案件数は3倍量の増加を観測しました。
効果はそれだけではありませんでした。目の前のルーティン業務に忙殺されることがなくなったことで、捻出した時間で付加価値の高い業務に専念できるようになり、さらに多くの技術開発を行えるようになりました。
以上が、私がクロマト工程の変革を志すことになった原初体験です。
メガファーマに仲間入りしようとしていた企業で苦しかったあの頃、技術革新を本当に必要としていたのは、他の誰でもなく自分自身だったのです。
4. クロマトグラフィー工程「仕組み化」の威力
たかだかクロマト工程の「仕組み化」が創薬探索研究の効率を一変する
我々独自のソリューションは、クロマトグラフィー工程の「仕組み化」です。
「仕組み化」とは、いつでも、どこでも、誰が行っても、同じ成果を出せる方法を構築することを指します。
これにより、従来までは研究者個人の「暗黙知」に大きく左右されていた、クロマト工程の不安定さ(成否や効率のばらつき)が解消されます。
つまり、上記の理由でボトルネックであったクロマト工程を「仕組み化」することで、創薬探索研究全体におけるリードタイムの公算が立つ体制に変わります。
我々が独自に開発した「仕組み化」には、二大要素があります。「規格化」と「デジタル化」についてご説明します。
A:規格化
下図の左側の規格化は、「何を使うか?」の話です。
標的となる分子構造(低分子全般、中分子ペプチド・オリゴ核酸など)群の分析・分取を達成するための因子(装置、カラム、移動相、分離メソッド)の組み合わせを特定・極小化し、一定時間内に高い成功確率で高純度物質を得るためのワークフローを設計します。
B:デジタル化
下図の右側のデジタル化は、「どうやって使うか?」の話です。
予め上記の規格化された検討範囲で、熟練者の“経験と勘”が必要な項目の全てについてロジックツリーやアルゴリズムを駆使することで言語化・数値化し、取得したデータを自動演算するソフトウェアがヒトの判断を代行します。
クロマト工程における「仕組み化」、すなわち「規格化」と「デジタル化」のイメージを示すために、分離条件探索から分取に到るまでを例に説明します。
上に示したのは、現在の一般的な企業における分取を行うための大まかな手順です。
分離条件探索を行い、分取を行うためには必ず「誰かの意思決定」が必要になります。
カラム、移動相、分離メソッドなど、無限は言い過ぎにしても膨大な組み合わせの検討が必要になります。これに加えて、どんな実験計画を組むか、検討結果をどう解析するか、どこまでやるのかなど、必ず熟練者の“経験と勘”が求められます。このような個人の試行錯誤から得られた結果は、実施者のスキルや分離の難易度によって大きく変わります。
これに対して、下に示す我々の「仕組み化」プラットフォームでは、利用者の経験と勘で進むことがない状態に変わります。
ハードウェアの組み合わせは予め最小限に設計されています。この規格にしたがって検討を開始するだけです。我々が設計する「規格」は、お客様の実績として年間通じて80%以上の適用確率・成功確率を誇ります。
次に、分離条件探索結果から、「最適」な条件が自動作成されます。ロジックツリーやアルゴリズムを搭載したソフトウェアが意思決定を代行してくれます。一切の試行錯誤がなくなるため、圧倒的な高速化に貢献します。
a. 従来までの長い長いワークフローを削減【高速化】
従来の複雑で属人的なクロマト工程を「規格化」「デジタル化」することで、非常にシンプルなワークフローになります。効果を説明します。
分析・分取を達成するためのアプローチが予め「規格化」されているため、赤色のように何を使うのかをお客様が設計する必要はありません。文字通り引き渡しを受けて初日からフル稼働が可能です。
熟練者の「経験と勘」に依存してきた意思決定ポイントが全て「デジタル化」されているため、青色のように各ポイントで利用者が判断する必要がないワークフローになります。
さらに言えば、仮に分取の失敗が予見される場合は、予めソフトウェアがそのことをコメントしますので、やり直しもほとんど発生しません。
その結果、ここまでワークフローが短縮されます。利用者のスキルを問わずに、短時間に、高い成功確率でクロマト工程(分離条件探索から分取、濃縮まで)を完遂できます。
b. 僅か数回のPC画面上のクリック操作で完了【省力化】
「仕組み化」を導入した場合の作業イメージです。
分離条件探索から分取までを行うケースとして説明します。
分離条件探索では、分析条件などは予め規格化で設定されているため、サンプル名と分子量を入力して、分析をスタートするだけです。
分子量は、クロマトグラム上で目的物をMSで特定するために必要な情報です。
分析(分離条件探索)の結果はソフトウェアが自動で解析し、分取条件を自動設計します。あとは、その条件で分取作業を自動実行するだけです。
c. 利用者を問わずに最適条件で分取を達成【脱属人化】
「仕組み化」は、再現性についても恩恵が得られます。我々は、いかなる場合においても「最適な分取」条件を自動設計できるアルゴリズムを開発しました。
従来との比較により、その有用性を以下に示します。
どのような分取方法を「最適」とするかは、個人差が現れやすいところです。
大きく分けて以下の3タイプに分かれることが多いようです。
- 分離の大きさを最優先して時間をかけて、しっかりと分離させて目的物を得るAさん
- 失敗したくないので少ない注入量で、同じ作業を繰り返して安全に進めるBさん
- 一度に大量に注入し、分離が不十分でも純度の高いフラクションを選別するCさん
上記は全て、「時間」「労力」「資源」のいずれかまたは全ての無駄です。
これに対して「仕組み化」では、分取における「所要時間と注入量」のライトバランスを満たす「最適な分取」を定義しています。
これに従い、いかなる化合物に対しても「最適な分取条件」、すなわち「定められた時間内、1回の注入で、ベースライン分離を実現する最大注入量」の自動設計が可能です。
上記の「検討の終点」が定まることで、利用者のスキルや知識を一切必要としない一元的なクロマト工程のワークフローが出来上がります。
これにより、極めて高い再現性を確保できます。
5. 「仕組み化」の要、Jeanious One LC
「仕組み化」において「デジタル化」を担うソフトウェア、Jeanious One LC
いつでも・どこでも・誰もが確実に分析・分取を達成するための秘訣は、「仕組み化」です。 現在、我々がご提供するクロマト工程の「仕組み化」の対応範囲は、
- 分離条件探索:分析装置を用いたスクリーニング分析
- 分取:分析結果をもとに分取装置を用いたスケールアップ分取
- 濃縮:分取により得られた分画液を遠心濃縮機にて濃縮・乾固
の3つのイベントです。
前述した通り、「規格化」することで高い成功確率を担保し、「デジタル化」で高速化を実現可能です。このうち「規格化」については、ご契約いただいたお客様にご開示するコンフィデンシャル情報ですので、ここから「デジタル化」について概要をお伝えします。
Jeanious One LCは、3つの機能を持つソフトウェアから構成されています。
- Be the Anchor:毎日の装置メンテナンスを自動支援するソフトウェア
- Be the Rudder:分離条件探索から分取までをシームレスに自動設計するソフトウェア
- Be the Funnel:分画液の濃縮・乾固までをシームレスに導くソフトウェア
我々の開発した3つのソフトウェアの名称は、すべて“クルーズ用語”となっています。 クロマト工程の変革という、「新大陸」をめざして出発、Sail upするという想いを商品名に託しました。
a. Be the Rudderの機能
「舵」を意味する、Be the Rudderについてご説明します。
第一段階として、分析装置を制御して分離条件探索の実施を自動で行います。
第二段階として、分析結果から有利な条件の選定、その条件の最適化設計を自動で行います。
第三段階として、分取装置に最適条件が作成され、分取の実施を自動で行います。
上記のような利用者の「経験と勘」に基づく一連の作業と判断を本ソフトウェアが代行し、僅か数回のPC画面上の操作で分取を成功に導く、Jeanious One LCの核となる役目を果たします。
b. Be the Rudderのワークフローイメージ
「創薬探索研究の分取」業務としての実用例を示します。
分離条件を見出すための分析では、「僅か2分の分析」から様々な情報を抽出します。その分析結果から、
➊最適分離条件に導く数式
➋その際の分取負荷量を見積もる数式
が、僅か数秒で作成されます。
仮に100検体あれば、100検体分の最適条件が提案されます。
あとは、実際にサンプルをセットして、分取を行います。利用者はこの間、クロマト工程において、何らかの知識やスキルを要求されることはありません。
ただ、分析と分取の場面で装置が動くだけです。
たったそれだけで、目的物ピークをキレイに分画できます。
ソフトウェアの自動演算の様子をお伝えします。
ソフトウェア上の判定結果は、交通信号と同様の色づかいで表現しています。
緑色なら、「自動分取の成功確定」を意味します。こうして、自動分取のフローがスタートします。
黄色なら、いずれかの選択を要求されますが、その後のフローは、緑色と同様です。
赤色は、分取不可能を意味します。ご契約した範囲で赤色判定になるケースは稀です。
こんなにも簡単な業務フローなのですが今のところお客様における実績としては、平均して年間80%以上の達成率を誇ります。
c. 劇的なピーク形状の改善
Be the Rudderを搭載した「仕組み化」には、さらに魅力的な特徴があります。
分取時のピーク形状を劇的にシャープに変え、分取と濃縮の効率を著しく向上させます。
左に示したのは、従来の分取のやりかたです。
一般的なフォーカスグラジエント分取では、ピークが広がってしまうことが少なくありません。特に、分子量が大きくなるペプチドやオリゴ核酸では、その傾向が顕著です。
この場合、目的物近傍のピークを全て飲み込むため、分取後に膨大な労力を必要とします。
何故なら、数多のフラクションの中から高純度品の分画領域を見極めるためにヒトが試行錯誤しなければならないからです。クロマト工程において利用者が長時間拘束される理由です。
一方で弊社技術では、ピーク形状(シャープさ)すなわち理論段数は文字通り、“ケタ違い”になります。これならよく分離するので、有効な分画領域を見極める必要もありません。
自動分取には、こうした設計ができていなければ、「サンプル毎に利用者が判断する」ことになります。そして結局、ヒトの試行錯誤に頼ることになってしまいます。
d. ピーク形状改善による劇的な業務効率化
ピーク形状が劇的にシャープになるということは、クロマト工程の省力化をさらに後押しします。
従来法による分取の液量は、“どすこい”のスケールです。フラクション本数は、1サンプルあたり、平均30本以上になります。このうち目的成分のフラクション領域は、平均9本ぐらいです。
これだけの数になるため、夜間運転を実施してもすぐにフラクションラックが満杯になり、ほとんどその時間を有効利用できないのが実情です。
これに対して、弊社技術では、「シュッ」としています。
これまで複数のお客様において、1サンプルあたりの目的成分のフラクション本数は平均1本です。
これなら、フラクションラックの入れ変え不要、放置も可能です。
つまりこの技術によって、日中だけでなく夜間も分取を、フル稼働させることが可能です。
弊社のお客様のほぼ全てが、このように夜間をフル活用して、ラボを「不夜城」にされています。
a. Be the Funnelの機能
「煙突」を意味する、Be the Funnelについてご説明します。
分画液を遠心濃縮機に設置するために必要な情報を自動抽出します。ソフトウェアのナビゲーションによって短時間、かつ手間のかからない濃縮操作が可能になります。
第一段階として、分取後の分画液情報から、遠心濃縮機への配置場所を自動で提案します。
第二段階として、ソフトウェアに指定された場所に、利用者が分画液を設置します。
第三段階として、従来の煩雑な「水差し」作業を行わずに、自動遠心濃縮を開始します。
b. Be the Funnelの操作イメージ
Be the Funnelで分画液の情報を自動取り込みすることで、遠心濃縮におけるこれまでの涙ぐましい労苦から解放されます。
クロマト工程の「仕組み化」は、遠心濃縮との連動が最も効果的であると我々は考えます。
創薬探索研究では、多くの化合物を迅速に合成し、分取しなければなりません。
こうした多検体を効率よく捌いていくためには、エバポレーターによる濃縮ではすぐに業務がパンクしてしまいます。
上記の問題を解決するために遠心濃縮機が登場し、多くの研究現場で支持されています。
そこで、分取完了後にシームレスかつ速やかに遠心濃縮へ移行できる技術を開発しました。
下図に示したのは、Be the Rudderで自動分取完了後の画面です。
特筆すべきは、分画液の情報から遠心濃縮機に設置する場所が自動で紐づけされていることです。利用者はこの案内にしたがい、一切の試行錯誤なしに濃縮作業を開始することができます。ここにBe the Funnelを含む「仕組み化」の特徴があります。
c. 遠心濃縮における「水差し」作業からの解放
下図に示したのは、Be the Funnelを含む「仕組み化」によって遠心濃縮の労苦である「水差し」作業から利用者を解放するための検証結果です。
一度に自動で多検体を濃縮・乾固できることが特徴の遠心濃縮機ですが、その反面で利用者に労苦を強いることがあります。それは、左右のラック重量が均衡を保たなければ濃縮開始することができない問題です。
このため、左右に設置する分画液の重量を毎回天秤で測定し、バランスが不十分であれば水で重量を調整する「水差し」作業が必要になります。
上記ははっきり言って、不毛な時間と労力です。
そこで我々は、目的とする分画液を遠心濃縮機に設置すべき場所を自動で提案するソフトウェアを開発し、その精度が極めて高いことを検証しました。
これにより、従来法では避けられなかった「水差し」作業を省略しても、簡単に遠心濃縮作業に移行可能になりました。複数のお客様からも「水差し作業が不要になった」とご評価いただいております。
d. 濃縮における「多段階濃縮」作業からの解放
下図に示したのは、従来法による分取の成果物である「膨大な分画液量」を極小化したことによる濃縮作業の二度手間・三度手間からの解放です。
下図に示した通り、従来法の分取における目的成分のフラクション領域は、平均9本です。
このため、合計3回におよぶ、煩雑な作業が必要になります。
最初に、分画液群をいったん濃縮乾固します。
次に、乾固した各容器内を再溶解し、合一します。
最後に、合一液を再び遠心濃縮します。
これで、ようやく濃縮作業が完了します。
一方、Be the Funnelを含む「仕組み化」では、1本の分画液を設置したら作業完了です。
前述した通り、創薬探索研究の分取における目的成分のフラクション本数は、平均1本だからです。
これなら、濃縮作業の「手間ひま」不要、放置可能になります。
クロマト工程で「最も不毛」と思える行為は、濃縮にまつわる、さまざまな作業です。
真の意味で「クロマト工程の変革」を狙うなら、分析、分取、濃縮の連動が不可欠です。
全ては、ピークを「シュッ」とさせることから、はじまります。
a. Be the Anchorの機能
「碇」を意味する装置のメンテナンス支援ソフト、Be the Anchorについてご説明します。
「誰でも簡単」は、実は注意すべきことがあります。
熟練の研究者であれば、装置使用前に性能を確認して、感覚的に異常に気づくケースが多いですが、「誰でも簡単」な場合は、そうはいきません。
誰もが分析・分取を成功するためには、最初に装置が安心して利用できることを担保する必要があります。そのために以下に示す機能をBe the Anchorに搭載しました。
第一に、予め指定した時間(例えば明け方)に、装置とカラムなどの状態を自動診断します。
第二に、異常が検出された場合は、以降の作業が無駄になるため装置が自動停止します。
第三に、異常発生時の原因絞り込みを、ソフトウェアのナビゲーションで支援します。
第四に、日々の診断結果をヒストリーとして簡単に視認化でき、トラブルを予防できます。
b. 分析・分取業務のリスク管理、SSTの重要性
はじめに、リスク管理の重要性についてお伝えします。
下図に示した通り、分析・分取装置には実にこれだけの変動パラメータについて毎日管理する必要があります。
創薬開発段階では、探索段階に比べて開発化合物の品質を保証する重要性は格段に高くなります。そのため分析担当部門では、必ず分析業務を行う対象装置の適合性試験(System Suitability Test, 通称SST)を実施することが義務付けられています。
その一方で、探索段階においてはその義務がなく、実際に殆どの企業において毎日SSTを実施するところは極めて稀です。弊社における複数のお客様に対するインタビュー結果も上記の認識を支持する結果でした。
クロマト工程を「仕組み化」することで高速化・省力化・脱属人化すると言いながら、装置の異常に気づかず使い続けると、「失敗の山を築くことになる」ということです。
ひとことで言えば、それは「やぶれかぶれ」の研究体制です。
c. 毎日の装置状態を自動診断
Be the Anchorに関する1つめの特徴的な機能を下図に示します。
予め指定した時間(例えば明け方)に、装置とカラムなどの状態を自動診断します。
前述した全ての変動要因に対して自動解析を行い、その結果を判定してくれます。
異常が検出された場合は、以降の作業が無駄になるため装置が自動停止します。
装置が複数ある場合でもネットワーク環境を構築すれば、居室あるいは遠隔地から1つの画面でSST結果を一括管理することができます。
d. 異常時の原因特定と復旧までの対処をナビゲート
Be the Anchorに関する2つめの特徴的な機能を下図に示します。
異常時における原因の絞り込みをソフトウェアの案内によって支援します。
異常が判明した際にどうやって原因を特定し、迅速に復旧させるかは利用者の大きな悩みの種です。実は、多くの製薬企業において装置の維持管理のために膨大な時間と労力を割いていることが、弊社の独自調査で判明しました。
Be the Anchorは、異常時にその箇所と原因を特定し、さらに復旧までの手順に到るまで、ナビゲートしてくれます。
軽微な問題は自前で解決できるため、復旧までの装置停止時間を短縮できます。
装置トラブル事例のたいてい(90%以上)は、ヒューマンエラーか、パーツの劣化です。
こんなことで毎回メーカーを呼んでいるようでは、ダウンタイムが増して折角の自動化の恩恵を享受できません。
仮に自前復旧が難しいというソフトウェアの判断に至った場合は、原因解明に向けた検討結果や数値的な根拠を示せるため、装置メーカーへの引継ぎを効率化できます。
自動化には、継続性が求められるため、スキのない運用方法まで考えておく必要があります。
ここまで「器」を用意するのが「仕組み化」の構想であり、研究現場のペインポイントを特定した上で、それを解消したのがBe the Anchorです。
6. 「仕組み化」の目覚しい実績
「仕組み化」の威力を証明する、数々の目覚しい実績
弊社の「仕組み化」プラットフォームについて、直近の導入実績を下図に示します。
すべてクロマト工程におけるトータル所要時間の著しい短縮を達成しています。
- 低分子化合物はキッセイ薬品工業様で、所要時間が70%削減を達成
- ペプチドはコスモ・バイオ様で、作業時間が60%削減を達成
- オリゴ核酸はジーンデザイン様で、所要時間が80%削減を達成
ここでは下図が示す特筆すべきポイントを列記します。
- 上記の3社様においては、2024年度の僅か1年間だけで達成
- 有機合成で対応可能な主要分子モダリティーで実用性の高さを証明
- 装置導入から全て半年以内で効果を観測
もちろん他の大手企業様においても導入実績はありますが、ここでは現在公開可能な情報をお示ししています。
a. DX:ヒトの労力削減
Quality Check(QC)分析部門のお客様におけるDX効果を下図に示します。
膨大な量の分析業務に追われる過酷な状況下、グループ全体で懸命に取り組むものの、個人のスキルに大きな差があったために毎月の業務積み残しが増加の一途を辿っていたお客様からご相談をいただき、要件定義・戦略策定からお手伝いさせていただいた「仕組み化」プラットフォーム導入後の効果を示します。
「仕組み化」導入の結果、従来と比べて97%のDX、すなわちヒトによる分析業務の試行錯誤の自動化に成功しました。この劇的な効果により、以降は業務の積み残しがなくなったと聞いております。
また、導入から半年以内で上記成果を創出しており、この変革を大変御評価いただきました。現在も継続してご利用いただいております。
b. GX:溶媒、消耗品の使用量削減
創薬探索研究において、有機合成部門で分取を行うお客様のGX効果を下図に示します。
左側に示したグラフは、分取時の溶媒使用量の比較です。
お客様における従来法では、研究者の「経験と勘」に基づいて分取条件を設計するため、ヒトや化合物(不純物との分離の程度)によって、時間が大きく変わり必然的に溶媒使用量にも差が生じます。
これに対して「仕組み化」では、トータルで67%の使用量を削減できています。さらに、ヒトや化合物によらず分取所要時間は一定であるため、常に必要最小限を維持できることがわかります。
右側に示したグラフは、分取時のフラクション容器使用本数の比較です。
お客様における従来法では、膨大な数のフラクション容器が使用されていました。ここでもヒトや化合物によって使用本数が大きく変動します。分取時のピーク形状は、殆どがブロードでした。
これに対して「仕組み化」では、トータルで95%の使用本数を削減できています。前述した通り、ピーク形状が劇的にシャープになるため極めて少ない分画液量になります。
※本比較では、意図的に分画液量が多くなる検体を用いましたが、それでも「仕組み化」ではフラクション容器本数は全て2本以内に収まりました。年間を通じた平均本数は1本です。
c. 「仕組み化」の適用範囲の広さ
弊社によるクロマト工程の「仕組み化」は、医薬品において3種の分子モダリティーで威力を発揮するばかりではなく、他の用途(キラル分取や開発段階における分析業務)や、異なる研究分野でも成果を上げています。適用範囲の広さを下図に示します。
ここでは、各分野のクロマト業務について「仕組み化」技術によって所要時間の短縮を成し遂げた例をまとめました。
低分子医薬では、キラル・アキラルに分類して実績平均を示しました。
中分子医薬では、ペプチドとオリゴ核酸の実績平均を示しました。
さらに、農薬と化学品分野における実績平均を示しました。
ここで示した範囲や用途において、業種を問わない著しい成果が観測されました。
お客様が抱える課題や目指すゴールをお伝えいただければ、事前に合意した目標を極めて高い成功率で実現できると考えております。
7. 「仕組み化」は、ロボット化実現に向けたパスポート
ロボット化の惨状と、効果的な打ち手は「仕組み化」
みなさんもよくご存じでしょうが、研究生産性を上げる近年の取り組みの潮流は、「ラボ・オートメーション」です。
下図に示したように有機合成にはじまり、様々なプロセスを経て、ついには薬理活性試験までを自動化しようという壮大な試みです。
ここで今一度、「世の中の常識」について、確認してみます。
「ラボ・オートメーションという取り組みは、ほぼ100%ロボット化を指す」という認識で、差し支えないと思います。
根本的な疑問があります。
「ロボット化だけで、本当にクロマト工程を変革できるのか?」ということです。
ここに示したワークフローには、サンプル溶解、分離条件探索、分取、濃縮、そしてQC分析まで、下図に示したような様々な要件が求められます。
長年クロマト業務に従事してきた、我々からの警鐘は、以下の通りです。
- 試料をロボットアームで運んだところで、クロマト工程の各段階の要件は満たされない
- 失敗の山(未溶解、未分離、未溶出、流路内析出など)を築く可能性が高い
- クロマト工程の成功には、失敗を回避するために多くの「知識とスキル」が求められる
実際の問題として、クロマト工程のロボット化の取り組みには、利用者の期待値と実情に大きなギャップが生じています。それは、上記の必ず躓くことになるハードルを乗り越えることができないからと断言できます。以下は、ありがちな失敗例です。
- ロボティクスや、AIという言葉に対して万能な技術と、使う側が勝手な幻想を抱く
- イノベーションを達成するための要件定義がされないまま、作業の自動化のみが先行
日本の製薬企業が、海外製薬企業によるロボット化の発表に刺激されたものの、ほぼ全てが成功確率や投資金額の面で断念して、クロマト工程を手作業で対応しているのは、このためです。「使いみちのない、やぶれかぶれのオートメーション」に他なりません。
要件定義によってワークフローがどのように変わるのかを、下図で示しています。
「仕組み化」を導入する前のお客様のワークフローは、総じて上のように複雑です。
分離の難しさやヒトのスキルによって、いくつもワークフローが分岐します。
このようなワークフローの状態でロボット化しようとすると、多くのロボットシステムを複雑に組み合わせる必要があり、導入コストと開発期間が肥大化することは必至です。
これに対して「仕組み化」では、実際に下のように極端にシンプルになります。
「仕組み化」というキーワードのもと、創薬研究、カラム開発、装置開発、プログラム作成、各分野のプロフェッショナル集団が、集結したのが我々ChromaJeanです。
「あるべき姿」を言語にして、整理して、数式に変換することで極限までワークフローをスリム化しました。
これまで述べてきた通り、ラボ・オートメーションと同義であるロボット化を実現するためには、研究サイクルのボトルネックであるクロマト工程について十分に要件定義することが必要です。闇雲なロボット化に着手しても失敗は自明です。
第一段階として、研究者が試行錯誤している現状のクロマト工程を「仕組み化」して、誰でもロボットでも成功できる状態にしなければなりません。
第二段階として、仕組み化によって極限まで要件定義されたクロマト工程であれば、ロボット化に移行が可能です。
以上より、弊社が開発したクロマト工程の「仕組み化」は、確実にロボット化を実現するための最も相性の良いソリューションになり得ます。
「仕組み化」による要件定義の効力は、「確実にロボット化できること」だけではなく、「少額・短期間・省スペースでロボット化の導入ハードルを一気に下げること」でもあります。
分析・分取の自動化では、一般的に、HPLCなどの液体クロマトグラフィー装置は別として、おそらく数億円から数十億円を要します。いわゆる産業用ロボットを使用し、実験室の整備・工事なども行い、何年もかけて導入することになります。
一方で、弊社とトーチ社が連携するロボット化は、価格が一桁下がることがわかっています。
トーチ社が有する高いロボット化技術では、産業用ロボットではなく協働ロボットを用いるため、大がかりなラボの工事は不要です。必然的に実装までの期間は短くなります。
また、研究という特性上、作業を少し変更したいといったことが起こりやすいですが、協働ロボットであれば柔軟に対応できます。
弊社とトーチ社の協業による「仕組み化」経由のロボット化について、一般的に想定される導入コストを記載しました。十分に魅力的な提供価格だと考えております。
このたび、弊社による「仕組み化」を中核技術として、クロマト工程を完全自動化するエコシステムを構築しました。
協働ロボットの開発で信頼と実績を築いたトーチ社、液体クロマトグラフィー装置メーカーとして最大手であるWatersの日本法人日本ウォーターズと連携して、3社で「前人未踏のクロマト工程全体の完全自動化」を可能にします。現在、複数のお客様から問い合わせをいただいております。
8.ChromaJeanが目指した未来、実現した環境
日本発祥、世界初のクロマト工程の変革で、創薬研究の効率を一変させた
1. 古くからある「当たり前の技術」で、これまで「失われてきた時間」を取り戻す
創薬研究の日常に欠かせない、クロマトグラフィー業務に要する膨大な労力から研究者を解放し、創造的な業務に充てる時間を捻出する
2. クロマトグラフィー技術の変革により、創薬探索研究の競争力(QCD)を提供する
● Quality:「1/25,000の成功確率」をいかに高めるか
構造活性相関研究(SAR study)サイクルにおける「分析精度=データの質」、「取得物の純度=化合物の質」を持続的に担保することで、研究者の「デザインの質」向上に貢献する。このことが、創薬探索研究の「意思決定の質」を引き上げる。
● Cost:「ヒト・モノ・カネ」をいかに軽減させるか
どの企業の創薬探索研究においてもコストを圧迫しているクロマト工程に要する「ヒト・モノ・カネ」について、DX, GXを通じて極限まで削減する。
これにより、単なるクロマト工程のコストカットではなく、新しく捻出できた投下資源を創造的な業務に再分配できる。
● Delivery:「意思決定までのリードタイム」をいかに短縮させるか
クロマト工程における膨大な「試行錯誤」がSAR studyサイクルの律速となっていた従来から、「作業と意思決定」をソフトウェアに代行させることで
圧倒的な時間短縮と高品質な化合物取得を可能にする。これにより、SAR studyにおける「意思決定までのリードタイム」の短縮に貢献する。
a. 実戦における「仕組み化」の適用確率、成功確率の高さ
最もお問い合わせ回数の多い、「仕組み化」の実用性をご紹介します。
ここでは、ペプチド化合物の受託合成をされているお客様の事例でご説明します。
お客様ご自身で選ばれた化合物群を用いて、「仕組み化」を適用した分取結果を下図に示します。
弊社は分子量情報だけをいただき、その構造すら知りません。
実用性の試験結果は、次の通りです。
仕組み化適用確率は96%、分取目標達成率は88%でした。
なかなかの達成率です。これらがカンタンな化合物群だったと思われるでしょうか?
下図に示したのは、同じ化合物群を用いたお客様の分取達成率との比較です。
弊社が88%に対し、お客様は13%でした。
実は、この試験における「分取達成率」のハードルは、かなり高いものでした。
取得物について「純度が90%以上、回収率が60%以上」を同時達成した場合のみ、「成功」と定義しています。
この結果は、まさに研究現場に実戦投入できるものです。
ヒトがずっと拘束されて試行錯誤する方法より、ソフトウェア上の数回のクリック作業の方が、はるかに達成率が高いことを証明しました。
つまり、これまでの分取のやりかたとは、「成功」のレベルが大きく変わります。
b. 「仕組み化」による部門全体の労力削減効果
二番目にお問い合わせ回数の多い、「仕組み化」による労力削減効果をご紹介します。
ここでは、低分子医薬を開発するお客様の事例でご説明します。
下図に示したのは、お客様の研究現場に「仕組み化」を導入した前後で、有機合成部門全体としてクロマト工程にかかる労力削減効果を計測したものです。
これまでご説明した通り、創薬探索研究の有機合成部門においてクロマト工程が占める研究者の労力は約50%です。このお客様においてもその例外ではありませんでした。
これに対して「仕組み化」を導入してから約半年後では、部門全体としておよそ8%までに削減できたと聞いております。利用者の経験値を問わず、僅か数回のPC画面上のクリック操作だけで複雑で属人的なクロマト工程を完了できる証左です。
労苦から解放された合成研究者は、本業である化合物デザインと合成に存分に専念できるようになったとお聞きしております。
c. 捻出できた「時間」の使いかた、使いみちは自由
我々は、お客様に対して宣言した通りに、「時間」を捻出してみせます。
その捻出できた「時間」の使いかた、使いみちは組織や個人の自由です。
「使いかた」とは、あるものを正しく利用する方法を指すようです。※
最初からそのものに対して期待されている利用方法であるため、「仕組み化」によって捻出した「時間」を競争優位性の確保に充てる、などが該当するように思います。
以上から、「使いかた」については、「仕組み化」によって恩恵を受ける製薬企業やそのCROの組織全体として考えるべき未来なのかもしれません。
「使いみち」には、2つの意味があるようです。※
1つ目は「使いかた」と同じ意味です。2つ目は、「使う目的に応じたそれぞれの結果」という意味があります。最初から決まっている利用方法ではなく、その時の目的に応じて、自分で使いこなすことを表します。
自己実現に向けた投資として、「本来の研究業務に没頭する」、「リスキリングに充てる」なども考えられます。あるいは、「早く帰宅して英気を養う」でも良いと思います。
以上から、「使いみち」については、「仕組み化」によって恩恵を受ける研究者個人で考えるべき未来ではないでしょうか。
「すべては、時間を捻出するために。」
我々、ChromaJeanが目指した未来は、実現できる環境が整いました。
古くからある、当たり前の技術の変革で、創薬研究は大きく変わります。
※ 出典:意味解説辞典『「使い道」と「使い方」の違いとは?分かりやすく解釈』
著者紹介
三輪勝彦
株式会社ChromaJean
代表取締役社長兼CEO
世界初となるクロマトプロセスの仕組み化の開発者にして、創業者
経歴
- 1992年、国立 宇部工業高等専門学校を卒業
- 1992年、武田薬品工業へ入社
- 2009年、国内製薬企業を中心とする研究会、“クロマトユーザー会”を同業の友人達とともに設立。以来、会の代表者として現在に到る
- 2017年、ChromaJeanを設立、世界唯一となる“クロマト工程の仕組み化”を事業化
- 2021年、AMED “デリバリーと安全性を融合 した新世代核酸医薬プラットフォームの構築”アドバイザーに就任
- 2023年より、薬事日報連載、薬事日報鼎談、CPHIセミナー等、数多くの企画を求められる文筆家・表現者としても活動中
執筆関連
薬事日報連載:
- 第一期:「反骨の研究者、起業家になる」2024.2.26~2024.8.7
- 第二期:「劇場型イノベーションの興しかた」2025.2.12~2025.7.28
書籍:
- 薬事日報より書籍化予定(鋭意執筆中)
寄稿:
- ファルマシア:「日本発祥・世界初のクロマトグラフィープロセスの変革が、創薬研究を一変させる」(2025.3.1)
取材記事等
- 薬事日報:「鼎談 創薬探索研究の“仕組み化”を語る(上)」(2023.10.18)
- 薬事日報:「鼎談 創薬探索研究の“仕組み化”を語る(下)」(2023.10.20)
- RISFAX(医薬経済ONLINE):「クロマジーン 探索研究の分析・精製を効率化、1~2年で100社取引を」(2024.8.2)
- 化学工業日報:「クロマジーン、クロマト工程「仕組み化」」(2024.8.22)
- 日経バイオテクONLINE:「ChromaJean、独自のクロマト技術を武器に創薬などの研究支援事業を展開」(2024.8.23)
- 日刊薬業:「クロマト自動化で分析時間9割削減 武田から独立、クロマジーン」(2024.12.9)
- 国際医薬品情報:「トップインタビュー クロマトグラフィーを軽視しては創薬に未来はない」(2024.12.23)
- PHARM TECH JAPAN:「クロマトグラフィープロセスの仕組化により業務負担を90%削減」(2025.2.1)
- 国際医薬品情報:「薬業時事 経営目標と従業員の達成感」(2025.2.10)
- 医薬経済:「巻頭言 クロマトグラフィーの「仕組み化」創薬探索研究のコスト削減に」(2025.3.1)
- 日刊薬業:「クロマジーンが協業拡大 三輪社長兼CEO「時間捻出で日本の創薬に競争力」」(2025.4.14)
- RISFAX(医薬経済ONLINE):「クロマジーン 創薬研究などの分析・精製工程、自動化サービス提供開始」(2025.4.15)
- 化学工業日報:「クロマジーンなど、クロマト標準化サービス開始」(2025.4.18)
- 日経バイオテクONLINE:「独自クロマト技術のChromaJean、日本ウォーターズ、トーチとラボオートメーションの構築支援サービスを始動」(2025.4.23)
- 薬事日報:「鼎談 技術立国日本 研究者の人材教育をかく語りき(上)」(2025.5.7)
- 薬事日報:「鼎談 技術立国日本 研究者の人材教育をかく語りき(下)」(2025.5.12)
- リバネス「研究応援vol.38」:「クロマトプロセスの「仕組み化」で研究の生産性向上に貢献する」(2025.6.18)
